Amazon創業者のジェフ・ベゾスの愛読書としても知られ、不確実性科学の教授にして金融投資家でもある「ナシーム・ニコラス・タレブ」の名著「ブラック・スワン〜不確実性とリスクの本質」を紹介します。
ブラック・スワンの内容
ブラック・スワンの内容をざっくり説明します。
一言でいうとこの本は、不確実性とリスク管理の考え方についての教訓が得られる本です。
「ブラック・スワン(黒い白鳥)」とは、1697年にオーストラリアで発見された黒い白鳥のことですが、“誰も予想しなかったあり得ない事象”のことを意味しています。
つまり金融市場においてのブラック・スワンは、めったに起こらないが、発生すると市場に壊滅的な被害をもたらす事象のことをさしています。
この本では人間の予測に対する不確実性とリスクについて説明されており、誰も予想しなかったあり得ない事象(ブラック・スワン)が起こる原理が考察されており、世の中に潜むブラック・スワンの本質に触れています。
ブラック・スワンの定義
本書ではブラック・スワンの定義について次の3つが記されています。
- 予測できないこと
- 重大な影響を及ぼす事
- 後から振り返ると説明がつけられること
3.11の大震災など、世の中には予測不可能な重大な事象が度々起こります。
人類史上、世界を変えるような発明の多くは偶然の賜物だったことが多く、人間の予測能力には限界があるにもかかわらず、人間は本質的に予測したがる生き物だということが書かれています。
人間の思い込みなど、さまざまな観点から人間の心理バイアスが、思考や感情にどういう影響を与えているのかということは、とても興味深いです。
膨大な情報に溢れた現代において、無意識のうちに自分の考え方が偏っていくことに気付かされる本で、自分自身を俯瞰的に見ることの大切さに気づかされます。
ブラック・スワンと拡張可能性
ブラックスワンが起こるメカニズムとして、“拡張可能性とグローバル化”について説明されています。
拡張可能性とグローバル化を簡単に説明してみます。
例えば昔ながらの戸別訪問をする営業マンが1対1で営業活動をするのに対し、現代ではSNSなどを使って一気に大勢の人に拡散してPRできるようなインフルエンサーがいます。
昔ながらの戸別訪問をする営業スタイルでは、どれだけ凄腕の営業マンが頑張っても、インターネットやSNSなどを使って一気に大多数の人にPRするのに比べると、たかが知れています。
グローバル化が進んで拡張可能性のある世界ではこのようなことが可能となり、ブラック・スワンが起こりやすいということです。
「月並みの国」と「果ての国」
本書では「月並みの国」と「果ての国」という2つの概念が説明されています。
先ほどの例えでいうと、昔ながらの戸別訪問をする営業マンのように拡張可能性がないものが「月並みの国」で、一人で何万人にPRするインフルエンサーのように拡張可能性があるものが「果ての国」となります。
ランダム性が低く、大多数が平均的な結果となりやすい「月並みの国」に比べ、ランダム性が高い「果ての国」では、大成功できる人とそうでない人との格差が大きくなります。
現代のように技術革新が進んだ「果ての国」は、ブラック・スワンが生まれやすい環境だと説明しています。
ブラック・スワンと七面鳥
アメリカやカナダでは“七面鳥の日”とも言われる、サンクスギビングデー(感謝祭)があります。
この感謝祭で食べられることになる七面鳥の事例をブラック・スワンに例えています。
七面鳥は感謝祭のことなどは知る由もなく、肉屋に毎日餌をもらいながらすくすく育っており、これからもずっとそうあり続けると思い込んでいます。
しかしある日突然、感謝祭の日(ブラック・スワン)がやって来て、七面鳥は自分の運命を知ることになるのです。
一方で肉屋からすると、感謝祭の日に七面鳥を食べるために育てているので予定通りのことです。
七面鳥にとっては予想外のあり得ない事象(ブラック・スワン)でも、肉屋からすると当然の事象(ブラック・スワンではない)です。
この七面鳥の話から著者は、「(有害性の)証拠がないこと」を「(有害性が)ないことの証拠」と勘違いしてしまうことに問題があるとしており、これは我々人間にもあてはまることだと述べています。
ブラック・スワン(黒い白鳥)とグレー・ライノ(灰色のサイ)
金融市場では「ブラック・スワン(黒い白鳥)」の対義語として「グレー・ライノ(灰色のサイ)」という言葉もあります。
非常に珍しい「ブラック・スワン(黒い白鳥)」に対して、サイは灰色なのが普通です。
めったに起こらないが、発生すると市場に壊滅的な被害をもたらす事象のことを意味する「ブラック・スワン(黒い白鳥)」に対し、「グレー・ライノ(灰色のサイ)」は発生する確率が高く、大きな問題を引き起こすかもしれないにも関わらず、軽視されがちな潜在的なリスクのことを意味しています。
ブラック・スワンの著者「ナシーム・ニコラス・タレブ」とは
ブラック・スワンの内容はこのぐらいにして、本書の著者である「ナシーム・ニコラス・タレブ」についても簡単に触れておきます。
「ナシーム・ニコラス・タレブ」は、不確実性科学が専門で、ウォートン・スクールでMBAを修了し、パリ大学では経営科学の博士号を取得しています。
不確実性科学の教授にして金融投資家でもあるタレブは、ニューヨーク大学クーラン数理科学研究所で、7年にわたって確率論のリスク管理への応用を、客員教授の立場で教えています。
行動経済学や哲学などについても造詣が深く、マサチューセッツ大学アマースト校では、学長選任教授として不確実性科学を研究していました。
ニューヨークとロンドンで20年にわたる金融トレーダーとしての経験を持っており、ランダムウォークモデルや、それに関連する確率論に批判的であることでも知られています。
基本的にタレブの本は研究者としての強いこだわりが感じられ、独特のシニカルな表現が印象的です。
Amazon創業者「ジェフ・ベゾス」の愛読書
この本「ブラック・スワン」は、以前紹介した前著「まぐれ」と同様に、人間心理と感情に対する洞察がとても興味深いです。
どちらの本もタレブの専門分野である、不確実性についての深い知見をもとに書かれており、発売直後から話題となってミリオンセラーとなっています。
今回は、金融デリバティブのトレーダーであり不確実性科学が専門の教授が書いた名著「まぐれ 投資家はなぜ運を実力と勘違いするのか」を紹介します。 普通の投資本とはかなり趣向が異なりますが、投資家や投資に興味がある人にはおすすめの本です。 […]
今回はブラック・スワンについてほんの一部を紹介しましたが、株式市場の暴落や未曾有の自然災害などをブラック・スワンの事例に挙げ、不確実性とリスクの本質を説いています。
ブラック・スワンは上下巻で長い本なので、読むのをためらうと言う人も多いかもしれません。
この本を読んで、なんとなくでも人間の本質的なことを理解するだけでも、いろんな気づきがあると思います。
また、この本「ブラック・スワン」は熱心な読書家としても知られる、Amazon創業者のジェフ・ベゾスの愛読書としても有名です。
愛読書というくらいですから、きっと何度も読み返していたのでしょうね。
読む人にとって感じ方は違うと思いますが、ジェフ・ベゾスの心に響いた一冊でもあります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
Amazonでは上下巻のセットもあります。
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