この本「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」は、個別株を買う時に知っておきたい銘柄選びの方法だけではなく、株の売り買いについても丁寧に解説されています。
今回は、株式投資をするなら“一家に一冊”とも思えるこの本、「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」を簡単に要約して、参考になるところをいくつか抜粋してご紹介します。
ファンダメンタル投資の教科書の概要
この本「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」の初版が発行されたのは2012年の4月で、本書は7年後(2019年)にデータや資料などを直近のものに刷新した改訂版で、特に成長株の項目は大幅に加筆されいます。
この本の全般的に言えることですが、説明が決して長くなり過ぎず、要点をわかりやすいように説明しているので、とても読みやすいです。
「銘柄を選ぶ→株を買う→株を売る」までがサポートされており、銘柄選びについては「成長株」・「割安株」・「復活株」に分けて、それぞれの特徴や、注意点などについても解説されています。
会社四季報を例にして要点をわかりやすく解説しており、個別株投資に必要な最低限知っておきたい知識が、わかりやすく具体例とともに紹介されています。
株式投資の本は専門用語なども多く、読んでは見たものの、ちょっと難しくてなかなか頭に入らないということもあると思います。
この本は初心者の方でも理解しやすいように配慮しているのか、株式投資に必要な専門用語なども平易に解説されているので、株式投資初心者の方でも理解しやすいと思います。
ではこの本から参考になるところをいくつか抜粋してご紹介します。
成長株の探し方
この本に書かれている成長株の探し方についての要点は、「売上高や利益が毎期順調に伸びているかどうか」という点です。
過去3年程度の業績の推移を見て、売上高と利益が毎年増加傾向にある企業を探すように推奨しています。
しかし3年程度だと、たまたま3年間の業績が良かっただけで、本物の成長株ではない企業が混ざってしまう場合もあるので、できれば10年間くらいの業績推移をチェックした方がいいと書いています。
本書では四季報を使って、過去3~5年期分の業績をチェックする例が紹介されていて、四季報を読んだことがない人でも、どのように四季報を活用すればいいのかが、わかりやすく紹介されています。
なぜ成長株のPERが高いのかなど、この改訂版では成長株についての項目が大幅に加筆されています。
エムスリーやニトリホールディングスなどの具体的な企業の例をあげて、成長株選びのポイントが書かれています。
本書で定義されている成長株の条件と、成長株を見極める4つのポイントは以下の通りです。これらについては、第4章「中長期で狙いたい成長株投資への挑戦」で、詳しく説明しています。
- 過去3年以上、売上や利益が増加を続けている
- 当期以降も売上や利益が増加する見込みである
- 売上高や利益が年々増加
- ROE10%、ROA5%以上をキープしているか
- 売上高や総資産がまだ大きくないか?
- 株価がまだ大きく上昇していないか?
割安株の探し方
割安株を探すには、「PER 」・「PBR 」・「配当利回り」といった株価指標を使うと記されています。
ただしPERや配当利回りは性質上、利益や配当金が大きく変動する銘柄に対しては信頼度が低くなるので、株式投資に慣れていないうちは業績が不安定な銘柄を避けて、毎期しっかり利益を上げている銘柄を選ぶことを推奨しています。
それぞれの株価指標については、第3章で詳細に説明されているので、PERやPBRの意味がわからなかったとしても、しっかり理解することができると思います。
- PERとは
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株価と会社の利益を比べて、株価を判断する指標です。今の株価が1株あたり当期純利益の何倍の水準にあるかを計算し、倍率が少ない方が割安と判断されます。
出典:第3章/PERの意味 - PBRとは
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株価が1株あたりの純資産(1株あたりの残余財産の何倍の水準にあるか)ということを表しています。1株あたり純資産とは、企業が解散した時に名目上、株主が受け取れる1株あたりの金額のことです。
一般的に、PBRが1倍を割ると株価が割安と判断されます。
出典:第3章/PBRの意味 - 配当利回り
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現在の株価で株を買った場合、配当金により年間で何%の現金収入を得ることができるかを表したものです。
出典:第3章/配当利回りの意味
復活株の探し方
復活株というのは、文字通り赤字続きでどん底だった業績から復活してきた企業の株のことです。
過去の業績をチェックして、赤字が続いていても赤字額が縮小していたり、前期は赤字だったものの、業績が回復すると予想できそうな企業の株を探すことを推奨しています。
ただし赤字企業の場合、業績の回復を見込んでいたとしても、その通りにならない可能性があるので、復活株の注意点としては、株価が下落トレンドの間は買わないようにすると書かれています。
企業の財務状況をチェック
成長株・割安株・復活株を選定しても、投資先の企業が倒産しては意味がありません。
本書では会社四季報を使って、企業の財務状況を確認して倒産リスクがないかをチェックする、7つのチェックポイントを解説しています。
以下に記した7つのチェックポイントについては、それぞれわかりやすいように説明されています。
- 自己資本比率が低くないか
- 有利子負債が多くないか
- 営業キャッシュフローがマイナスになってないか
- 累積損失がないか
- 債務超過になっていないか
- 赤字続きでないか
- 継続企業の前提に関する重要事象の記載がないか
外国人投資家と投信の持株比率
投資初心者の頃は、外国人投資家と投信の持株比率については、あまり気にしていなかったという人も多いのではないでしょうか。
本書では外国人投資家と投信の持株比率についても注目しています。
外国人投資家と投信の持株比率の増減が、株価にどのような影響を与えるかを解説してるので、今までその辺のことはあまり気にしていなかったという人には、とても参考になると思います。
決算短信のチェックポイント
投資判断には欠かせない企業の業績や、財務状況などの情報が書かれているのが決算短信です。
決算短信は、決算開示書類である有価証券報告書を簡略化した内容で、有価証券報告書より提出までの期間が短いので、速報性が高いです。
本書では、決算短信の種類(本決算と四半期決算の違い)や、決算短信の構成についてもわかりやすく解説されています。
決算短信の中に含まれている財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の見方や、それぞれの財務諸表が四季報のどの箇所に対応しているのかが説明されています。
決算短信のチェックポイントを知ることができるので、効率よく決算短信を見て投資判断するのに役立つと思います。
もちろん決算短信の見方がよくわからないという人には特におすすめです。
大失敗しないための買い方・売り方
この本の最終章(第5章)では、株式投資で大失敗しないためのコツが説明されています。
例えば「なぜ業績がよいのに株価が下がるのか?」という理由に対しては、以下の2つの理由を挙げています。
- 実際の業績が予想より悪いことを株価が織り込んでいる(株価の先見性)
- 実際の業績は確かに予想通り好調なものの、株を売りたい投資家が多いため株価自体が下降トレンドにある
この2つの理由については、それぞれ具体的に説明されています。他にも「業績と株価が相反する動きを見せたときはどうするか?」や「いくら業績が良くてもこれだけは守るべき2つのルール」など、実際に株式投資するときに大失敗しないためのアドバイスが書かれています。
読み返しているうちに個別株投資の肝が身につく良書
個別株の投資をしたいけど何から勉強すればいいの?という方には、とりあえずこの本「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」をおすすめします。
具体的な資料を掲載して説明されているのでわかりやすく、銘柄選定に必要な要点が凝縮されているので、何度も読み返しているうちに個別株投資の肝が身につくと思います。
本の題名通り、個別株投資をするなら最低限知っておきたい知識は、この本を読めばだいたい把握できると思うので、株式投資で大きな失敗をすることもないと思います。
また、株式投資の良書には海外の翻訳版も多いですが、海外の翻訳版は基本的に海外の金融市場を対象にして書かれてるので、日本の株式市場には当てはまらないことも多々あります。
この本は日本の個別株投資を対象にして書かれているので、初心者の方でも理解しやすい本だと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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