1980年代にアメリカで有名になった伝説のトレーダー集団「タートルズ」に興味があるという人もいると思います。
この記事では、タートルズ最高のトレーダー「カーティス・フェイス」の著書「タートル流 投資の魔術」という本を紹介します。
この本ではタートルズが何を学び、どのようなルールでトレードを実践していたかなど、謎とされていたタートルズの具体的なトレード方法が明らかにされています。
この本は次のような人におすすめです。
- タートルズのトレードルールが知りたい人
- 成功したタートルと脱落したタートルの違いを知りたい人
- トレーディングでなかなかうまくいかない人
- 株などのトレーダー全般
伝説のエリート・トレーダー集団「タートルズ」とは
本の概要を紹介する前に、タートルズについて簡単に触れておきます。
タートルズとは、エリート・トレーダーの育成プログラムに参加した研修生のことです。
このエリート・トレーダー育成プログラムは、通称タートル・プログラムと呼ばれて有名になります。
友人同士の議論から始まったタートルズ
このタートル・プログラムは、1980年代に「ピット(立会場)の貴公子」と呼ばれた伝説のトレーダー「リチャード・デニス」と、彼の高校時代からの友人で数理論理学の専門家でもある「ウィリアム・エックハート」の議論から始まりました。
莫大な利益を上げ続けて有名になっていた当時のリチャード・デニスは、自分は運用能力が優れているのではなく、適切な指導を受ければ誰にでもできると考えていました。
しかしウィリアム・エックハートはリチャード・デニスの考えに異を唱え「トレーディングの能力は天賦の才」だと言って議論になります。
議論の末に、それなら実験してみようということになり、主要新聞各紙に広告を打って、トレーダー1,000人を募集しました。
募集要項は、トレーダー10人を選抜してリチャード・デニスのトレード手法を伝授した上で、個別に100万ドルを与えるという破格の待遇でした。
1,000人を超える応募の中から、リチャード・デニスの面接が受けられる最終候補に残ったのは40人。
知性と適性をテストされ、儲けるトレーダーに必須と思われる特性を共有した研修生が最終的に13人選ばれ、次の年にはまた10人が選ばれたそうです。
数学的能力と分析力を重視
タートル・プログラムの面接では数学的能力と分析力が重視され、後のインタビューでリチャード・デニスは「第一級の知力」を持ち合わせた人物を選んだと語っています。
タートル・プログラムの1期生の中には、シカゴ大学の言語学博士号を持つ人物や会計士、学生時代に州のチェス・チャンピンに輝いた、米国最大手の穀物企業のトレーダーなどがいたそうです。
わずか2週間の講習の後、少額の口座で1ヶ月のトレーディングの実習があり、実習期間に実績をあげれば100万ドルの口座を任せるということだったようです。
1ヶ月のトレーディング実習期間の最後にリチャード・デニスの成績評価があり、満額の100万ドルの口座を任された人もいたが、少額の口座しか与えられなかった人もいたようです。
特別待遇だったカーティス・フェイス
タートルズの中でもとびきり優秀だったカーティス・フェイス(この本の著者)は、特別に200万ドルの口座を任されたようです。
この本では、タートルズが養成講座で学んだことや実習期間での様子など、伝説のトレーダー集団タートルズの全貌が詳細に描かれていて、とても興味深いです。
タートルズの名前由来
タートルズの名前由来は、二人が訪れていたシンガポールで、亀の養殖場を見学していたリチャード・デニスが「シンガポールで亀を育てるように、私たちはトレーダーを育てよう」と言ったことに由来しています。
後に伝説のトレーダー集団として知られることになるタートルズは、「優秀なトレーダーは育成できるか否か」という友人同士の議論から生まれた壮大な実験だったのです。
その辺の経緯などに興味がある人は以下の本もおすすめです。
成功したタートルと脱落したタートルの違い
この本にはタートルズが何を教わり、どのような取引を行っていたのかが詳細に記されています。
取引のタイミングやルールなど、タートルたちはどうやって儲けていたのかを知ることができます。
また、全く同じ教えを受けていたのにもかかわらず、成功したタートルと損をして脱落したタートルがいたこと、なぜそうなったかの理由も書かれています。
たった2週間のトレーニングで、その後の4年間に1億ドル以上もの利益を上げて伝説となったトレーダー集団タートルズ。
「優秀なトレーダーは育成できるか否か」という議論から始まったこの壮大な実験は、育成できる方に賭けていたリチャード・デニスの勝利に終わりました。
この賭けは引き分けだった?
タートルズ最高のエリートであったこの本の著者カーティス・フェイスは、この賭けは引き分けだったと言っています。
成功したタートルの裏で、3分の1か2分の1ほどのタートルは、あまり利益を上げられないか、負け記録を更新し続けて脱落して行ったという事実が、ほとんど知られていないからというのがその理由です。
この本では最高の成績を残したタートルと、残念ながら成果を上げられず脱落して行ったタートルの違いはなんだったのかを知ることができます。
そこには人間の心理構造が深く関係しており、トレーダーの感情がどのように取引に影響するかを理解することが、いかに大事かということが書かれています。
トレーダーとしての適性や、成功したタートルのようなトレーダーになるために、「するべきことと、してはいけないこと」が具体的に書かれています。
タートルズ最高のエリートが書いた本
タートルズに関する本は他にもいくつか出版されていますが、この本は実際のタートルズだったカーティス・フェイス自身が書いた本です。
今や伝説となったタートルズの中でも、カーティス・フェイスは最年少で最高の成績をおさめた、タートルズ最高のトレーダーです。
最初の実習期間で他の実習生の3倍の利益を上げたカーティスを妬み、リチャードデニス(タートルプログラムの主催者)は、カーティス(この本の著者)だけに特別なことを教えているのではないかと疑う実習生もいたそうです。
カーティスはトレーダーとして成功をおさめるのに必要なのは、トレーディングシステムではなく、そのシステムを執行する能力だと語っています。
トレーディングシステムというと、特殊なプログラムのアルゴリズムのように思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。
「どのタイミングで、どれくらい取引するか」など、あらかじめ決めておいたルールに従って継続的かつ機械的にトレードを行う、システムトレードのことを指しています。
要は、個人の判断に頼る裁量トレードではなく、あらかじめ決めたトレードルールに従ってトレードをするのが大事だということです。
成功を妨げる人間の心理
本書でカーティスは、「人間は複雑な着想の方が単純な着想よりも優れていると信じたがる」と述べており、トレーダーとしての成功を妨げる人間の心理について自身の見解を述べています。
裁量トレードに引き寄せられる主な理由をあげ、タートルズ時代の貴重なエピソードを交えて解説しています。
トレーダーの心理的な挫折や、弱さの影響を目の当たりにしてきたカーティスですが、カーティス自身は心理的な影響を受けなかったと語っています。
トレーディングで一貫性を保つことはそれほど難しくなかったようで、自身のことをとてもめずらしい人間だと思っているようです。
優秀なトレーダーは感情に流されないことがわかりますが、タートルズ最高のエリートには、少なからず天賦の才能もあったようですね・笑
トレーダー全般におすすめの良書
この本はタートルズに興味がある人だけではなく、株式などのトレーダー全般に参考になることが多くておすすめです。
最近はテレワークの普及で、自宅で仕事をする機会が増えたという人も多いのではないでしょうか。
投資や投機に興味がある人なら、自ずとデイトレをする機会が増えているかも知れませんね・笑
そのような方なら、自分のスタイルにあったシストレを研究している人も多いと思います。
この本を読んで、自分なりのトレードルールを作る参考にするのもいいと思います。
私自身この本を読んで、裁量トレードの要素は自分の中から出来るだけ排除しなくてはいけないと強く感じました。
「トレーダーはリスクを売買する」、「自我に生きるものは自我に死ぬ」など、心に響く言葉を散りばめながら、タートル時代の逸話を交えて著者自身の人生観についても語られております。
前回紹介した書籍「賢明なる投資家」は投資家(investor)のために書かれていた本ですが、この本は投機家(speculator)のために書かれている本です。
ウォーレン・バフェットを例にあげて、投資家と投機家の違いも述べています。
優秀なトレーダーになるためのヒントが多いので、興味があればぜひ参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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