今回の気になる銘柄分析は「伊藤忠商事(8001)」です。
先日、2020年5月8日に発表された伊藤忠商事(8001)の決算の内容から、伊藤忠商事の特徴や株の買い時、5大総合商社の比較などをしてみます。
- 伊藤忠商事(8001)の主な決算内容
- 株価の割安性とコングロマリットディスカウント
- 伊藤忠商事(8001)の株は買いか
- 5大総合商社比較
伊藤忠商事(8001)の主な決算内容
では伊藤忠商事(8001)の2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結決算内容から、主なポイントを見ていきましょう。
画像出典:kabutan
売上高が前期比5.3%減となりましが、営業利益・経常利益・最終利益は過去最高を記録。
営業利益は3,994億円(前期比10.5%増)、経常利益は7,014億円(前期比0.9%増)、最終利益は5,013億円(前期比0.2%増)となっています。
直近3ヶ月(1~3月期)実績
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直近3ヵ月「1~3月期(4Q)」の実績では、最終利益が746億円で前年同期比27.5%減となっています。売上営業利益率は2.9%。
今期純利益予想と配当
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今期の予想が困難だということで、純利益と配当のみの発表となりました。
2021年3月期の予想は、最終益が4,000億円に減る見通しです(前期比20.2%減)。
今期の減益予想については伊藤忠商事に限ったことではないですが、最終益の予想を発表したことはポジティブな印象を受けます。
配当推移
画像出典:伊藤忠商事/IR(投資家情報)
2020年度の配当金予想は1株当たり88円で3円増配となり、配当利回りは4.08%です。
配当については累進配当という考えで、将来的に配当性向30%を目途にして段階的に引き上げていく方針です。
累進配当とは、業績結果が良くなくても配当金は現状維持以上にするということです。少なくとも減配はしないということです。
絶対ということはないのかもしれませんが、配当性向も32.8%と低いので、今のところ減配リスクもなさそうです。
収益性
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総合商社の中でも伊藤忠商事は収益性が高いことで知られています。収益性の指標とされるROEは16.9%で、ROAは4.77%です。
今期の予想ではどちらも減少していますが、それでもROEが13.35%というのはさすが伊藤忠商事。自己資本を利用して効率よく利益を上げていることがわかります。
この収益性の高さが伊藤忠商事の強みです。
財務実績
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40%以上あれば安定企業と言われる自己資本比率は27.4%と低めです。
大手総合商社のような事業は大量に在庫を抱えてビジネスを行うため、運転資金が大きくなり自己資本比率は低くなる傾向があります。
他の総合商社の自己資本比率も、概ね20%台後半から30%台前半と低めなので、業種で見れば平均的といったところでしょうか。
財務的には心配なレベルではないと思いますが、有利子倍率も1%を超えており、それほど良くもないといった感じです。
株価の割安性とコングロマリットディスカウント
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伊藤忠商事の現在(2020年5月8日)の株価は2.159.5円。
株価の割安性を図る指標のPER(株価収益率)は8倍で、PBR(株価純資産倍率)は1.07倍です。
一般的にPERは15倍以下、PBRは1倍以下だと割安と判断されます。PBRが1倍を超えているとはいえ、株価は割安水準といえます。
コングロマリットディスカウント
事業を多角化している総合商社のような企業の株は、「コングロマリット・ディスカウント(複合企業割引)」と呼ばれ、株価が割安に見積もられる傾向があります。
そのため、総合商社の株は全般的に割安傾向にあります。
同じように事業が多岐に渡る企業でいうと、国内ではオリックスやソニーなどもコングロマリット・ディスカウントにより、株価が割安になっています。
伊藤忠商事(8001)の株は買いか
今期の業績予想が困難なので投資には慎重にならざるを得ませんが、個人的には買いもアリだと思います。
累進配当や自社株買いなど、株主還元意識も高いので配当目的で投資するには良い銘柄です。
非資源ビジネスで強く収益性が高い
総合商社はこれまで、主に「貿易(トレード)」と「事業投資」を軸としてビジネスを展開してきました。
しかし貿易事業の中核となっていた資源ビジネスの価格が下がるなど、貿易事業は収益が下がり続け、総合商社は事業投資を強化していきます。
このようなビジネスのアップデートに、総合商社の中で1番上手く対応できたのが伊藤忠商事といるでしょう。
伊藤忠商事は中国最大のコングロマリットであり中国国有企業の、中国中信集団(CITIC)グループとも資本提携を締結しています。
中国は感染症拡大に考慮しながら世界に先駆けて経済活動を再開したり、今後の経済発展も期待できます。
伊藤忠商事は収益に占める非資源ビジネスの割合が高く、他の総合商社に比べて景気の影響を受けにくいといえます。
5大商社の中では1番収益性が高く、総合商社の株なら個人的には伊藤忠商事(8001)を選びます。
5大総合商社比較
5大総合商社の主な比較は以下の通りです。伊藤忠商事のROE(自己資本利益率)の高さはズバ抜けています。
会社名 | 時価総額 | 売上高 | 純利益 | 売上高純利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
伊藤忠商事 | 3兆4,226億円 | 10,982,968百万円 | 501,322百万円 | 4.5% | 16.90% | 4.77% | 8倍 | 1.07倍 |
三菱商事 | 3兆7,232億円 | 14,779,734百万円 | 535,353百万円 | 3.6% | 9.80% | 3.10% | ー | 0.66倍 |
三井物産 | 2兆7,304億円 | 6,885,033百万円 | 391,513百万円 | 5.6% | 9.69% | 3.30% | 15.0倍 | 0.71倍 |
住友商事 | 1兆6,163億円 | 5,299,814百万円 | 171,359百万円 | 3.2% | 6.45% | 2.14% | ー | 0.63倍 |
丸紅 | 8,193億円 | 6,827,641百万円 | -197,450百万円 | -2.8% | -11.30% | -3.01% | 8.2倍 | 0.54倍 |
5大総合商社の株価推移
下記画像は、5大総合商社の過去約10年間の月足を比較した株価チャートです。
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株価のパフォーマンスで見ても伊藤忠商事は別格です。
まとめ
最後に伊藤忠商事(8001)の投資のポイントをまとめておきます。
- 今期は減益予想だが買いもあり
- 株価はコングロマリットディスカウントによって割安
- 5大商社の中では1番収益性が高く非資源ビジネスに強い
このブログでは株式投資にまつわる疑問や個別株の分析など、株式投資に役立つ情報を発信しております。
今後も個別株をできるだけ簡単に分かりやすく紹介してみたいと思いますので、よろしければ参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。