今回は先日(2020/5/11)決算が発表された「ソフトバンク(9434)」 株の、今後の見通しや投資のポイントについて分析してみます。
- ソフトバンク(9434)の主な決算内容
- ソフトバンク(9434)の今後の見通し
- ソフトバンク(9434)の今後の課題
- ソフトバンク(9434)株への投資のポイント
ソフトバンク(9434)の主な決算内容
ではソフトバンク(9434)の2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結決算内容から、主なポイントを見ていきましょう。
画像出典:kabutan
見ての通り、前期に続き今季も軒並み過去最高益を記録する増収増益の好決算となっています。
売上高は4兆8,612億円(前期比29.8%増)、営業利益は9,117億円(前期比26.7%増)、経常利益は8,111億円(前期比28.4%増)、最終利益は4,731億円(前期比9.8%増)となっています。
直近3ヶ月(1~3月期)実績
画像出典:kabutan
予想通り直近3ヵ月「1~3月期(4Q)」の実績も、前年同期比(2019年1~3月期)から好転。最終利益は前年同期比4.9倍の364億円となり、売上営業利益率もマイナスから一転して9.4%となりました。
今期純利益予想
画像出典:kabutan
21年3月期も過去最高益を更新する見通しで、前期比+2.5%の4,850億円の見込みとなっています。
配当推移
画像出典:ソフトバンク株式会社/2020年3月期決算説明資料
今期の年間配当は、前期比1円増の86円に増配する方針です。
配当利回りは5.85%と高いですが、配当性向(純利益に占める配当金の割合)も85%となかり高いので、減配リスクが気になります。
収益性
画像出典:kabutan
売上営業利益率が18.75%と通信事業の収益性の高さが伺えます。
ROEとROAに関しては、ソフトバンク(9434)の場合、ROE(48.47%)は高いですが、借入が多いのでROA(負債を含めた総資産でいかに利益をあげているか)で判断する必要があるでしょう。
ROAは減少傾向とはいえ5.31%あり、今期の予想も4.95%なので良い水準です。
財務実績
画像出典:kabutan
40%以上あれば安定企業と言われる自己資本比率が10.2%というのはかなり気になります。
有利子負債倍率も5%を超えており、財務的にはかなり不安定な印象です。
通信事業の業績は堅調でも財務的には問題があると言わざるを得ません。
ソフトバンク(9434)株への投資を検討する際は、やはりこの財務面が懸念材料となってしまいます。
ソフトバンク(9434)の今後の見通し
今後の見通しについて、主に以下の点について考えてみましょう。
- 通信事業は今後も安定
- 子会社とのシナジーが見込める
通信事業は今後も安定
画像出典:ソフトバンク株式会社/2020年3月期決算説明資料
収益の柱となる通信事業は収益性が高く安定しており、今季も連続増益となりました。
今後は第4のキャリアとなる楽天や格安SIM業者との競合も考えられますが、ソフトバンクの傘下にはワイモバイルやLINEモバイルがあります。
今後はワイモバイルやLINEモバイルの成長も見込め、ソフトバンク・Y!mobile・LINEモバイルで、それぞれのターゲット・ユーザーの住み分けもうまくできているように思います。
通信事業については今後も安定した収益が見込めると考えられます。
画像出典:ソフトバンク株式会社/2020年3月期決算説明資料
子会社とのシナジーが見込める
画像出典:ソフトバンク株式会社/2020年3月期決算説明資料
ソフトバンクは事業の多角化が魅力の企業であり、子会社であるYahooやZOZOTOWNとのシナジーが期待できます。
M&Aに積極的で、携帯事業者の枠にとどまることなく、スマートフォンの利用で人々の生活を豊かにするというビジョンがあります。
キャッシュレス決済のアプリであるPayPayは、登録ユーザー数が2,800万人を突破しており、キャッシュレス決済においてはダントツでNo1のシェアを獲得しています。
画像出典:ソフトバンク株式会社/2020年3月期決算説明資料
今後は金融サービスの強化でさらなる成長が期待できます。
画像出典:ソフトバンク株式会社/2020年3月期決算説明資料
ソフトバンク(9434)の今後の課題
次にソフトバンクの今後の課題について、主に以下の点について考えてみましょう。
- 財務体質の改善
- 5Gへの対応
財務体質の改善
何はともあれ、まずは財務体質の改善が課題であることは明白です。
国内3大キャリアの自己資本比率と流動比率を比較してみましょう。
企業名 | 自己資本比率 | 流動比率 |
ソフトバンク(9943) | 約10% | 約75% |
NTTドコモ | 約70% | 約156% |
KDDI | 約46% | 約103% |
ソフトバンクの流動比率は100%以下となり、資金繰りの面でも十分な安全性が示せていません。
ソフトバンクは新たな事業への先行投資に積極的な分、財務面への負担が大きくなるのだと思いますが、財務体質はもう少し健全に改善したいところです。
5Gへの対応
これからの通信事業は、次世代通信規格5Gの普及が注目されており、5Gを利用したさまざまなサービスの利用が期待されています。
しかしソフトバンクは、NTTドコモとKDDIに比べて5Gへの取り組みが遅れている印象です。
総務省の比較審査基準の結果、事業者に割り当てられた5Gの周波数帯は、NTTドコモとKDDIが合計で3枠割り当てられたのに対し、ソフトバンクは新規参入の楽天と同じ2枠に止まっています。
画像出典:総務省(5G特定基地局の開設計画に係る認定申請の概要資料)
今後は5Gへの対応の遅れが、そのまま通信品質の差になってしまうかもしれません。
5Gは始まったばかりなので、まだそれほど影響はないと思いますが、本格的に5Gサービスが普及する前に十分な対応が可能なのかが気になるところです。
ソフトバンク(9434)株への投資ポイント
現在の業績や今後の見通しから、ソフトバンク(9434)株への投資のポイントを考えてみます。
ソフトバンク(9434)の現在(2020/5/14)の株価は1,430円です(PERは14倍でPBRは6.78倍)。
すでに時価総額が6兆円を超えており、これから株価が大きく値上がりすることはあまり期待できないと思われます。
通信キャリアは収益が安定しているので、配当目的での投資ならアリかもしれませんが、配当性向もかなり高いので正直微妙なところでしょうか。
収益性が高い通信キャリア株で配当を目的とした投資をするなら、個人的にはNTTドコモかKDDIを選びます。
しかしソフトバンクは将来的な事業の拡大という点でいうと、NTTドコモやKDDIにはない魅力がありますね。
- 配当目的ならアリ
- 通信キャリア株ならドコモかKDDI
まとめ
ソフトバンク(9434)の決算内容から、今後の見通しや投資のポイントについて分析してみました。
一言でまとめる、「業績は増収増益でも財務面が問題」といった感じでしょうか。
このブログでは株式投資にまつわる疑問や個別株の分析など、株式投資に役立つ情報を発信しております。
今後も個別株をできるだけ簡単に分かりやすく紹介してみたいと思いますので、よろしければ参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。