偉大なトレーダーたちが、どのように突出した成果を残したのか知りたいという人は多いと思います。
そこで今回は、トレーダーにおすすめの名著「マーケットの魔術師(原題は「Market Wizards」)」という本を紹介します。
通称「青本」と呼ばれるこの本は、「マーケットの魔術師」シリーズの中でも特に人気が高いシリーズ第1作目です。
著名トレーダーたちが、いかに自分のトレードスタイルで突出した成果を残したのかをまとめた本書はベストセラーとなり、その後「マーケットの魔術師シリーズ」として同じ著者の本が複数冊出版されてます。
- 著者と著名トレーダーのインタービュー形式になっている
- 伝説のトレーダー16人の成功の秘訣を紹介
この本は次のような人におすすめです。
- 株などのトレーダー全般
- トレーディングでなかなかうまくいかない人
- 著名トレーダーたちの成功の秘訣が知りたい人
マーケットの魔術師の内容
この本「マーケットの魔術師」は、当時のアメリカを代表するトレーダーたちにインタビューを行い、トレードでの成功の秘訣をまとめた本です。
初版がアメリカで刊行されたのは1989年で、本書の時代背景などはかなり古いですが、マーケットで成功するための重要な資質だった条件は、今でも通用するものばかりで参考になります。
本書の著者と伝説のトレーダー16人による対話形式で展開されており、トレーダーたちは、次のようなことを中心に語っています。
- どのようなきっかけでマーケットに興味を持つようになったのか
- 過去に犯した最悪の失敗とそのことから何を学んだか
- 自ら構築したトレード法の裏にある概念
- 心理的および性格的に、自分のどういう資質が成功をつかむカギになったのか
- トレーディングで大半の人が犯す過ち、また「大多数の人の認識」の特徴である間違った考え方
マーケットの魔術師で取り上げている内容は、ほとんどがトレーダーの考え方や精神面について書かれたもので、時代によって変わるマーケットの特殊状況などについては語られていません。
これらの概念や経験というのは、ほとんどが時間を超越したものであって、「マーケットを動かすのは人の心理であり、人間の心理は普遍なのである」という一文が序文に書かれています。
金融商品のトレードをする全ての人が知りたいであろう、伝説のトレーダーたちの成功の秘訣が綴られた本書は、初版から数十年経った現在でも増刷を重ね、時代を超えた名著として読み継がれています。
伝説のトレーダーが語る成功の秘訣
マーケットの魔術師には、伝説のトレーダーが語る成功の秘訣が散りばめられています。
本書に登場する伝説のトレーダーの印象深いインタビューの中から、エド・スィコータ、デビッド・ライアン、ウィリアム・オニール、リチャード・デニスのインタビューの一部を抜粋して紹介します。
エド・スィコータ
良いトレードの要素とは何ですか。良いトレードの要素とは、一に損切り、二に損切り、そして、三に損切りだ。もしこの3つの法則に従うならば、誰にでもチャンスはめぐってくる。どういうトレード・ルールに従っていますか。①損切りは早く、②利食いはじっくり、③ポジションは小さく、④躊躇なくルールに従う、⑤ルールを変えるべきときを知る。負けるトレーダーが勝てるトレーダーに変身するには、何をしたらいいでしょうか。負けるトレーダーが勝てるトレーダーに変身できることはほとんどない。負けるトレーダーは彼自身を変えたいと思ってはいない。それは勝てるトレーダーがやることなんだ。出典:マーケットの魔術師/エド・スィコータ
エド・スィコータは5,000ドルでスタートした顧客の口座を、約16年間で1,500万ドル(25万%)にまで増やしたと言われるトレードの達人。
コンピュータによるシステムトレードの先駆者として、知る人ぞ知る偉大なトレーダーです。
デビッド・ライアン
あなたの銘柄選択の手順を教えて下さい。まず株価チャートをながめ、テクニカル的に見て強い銘柄を書き出す。言い換えれば、注目銘柄をすべて書き出すということだ。EPSがどういう状態なら良いのですか。高ければ高いほど良い。少なくとも80、できれば90ぐらい。実際、僕の買う株の大部分はEPSランクが99だ。かなりの利益を上げているのに、株価が動かないのはどういう場合ですか。株式相場全体が弱く、手控えられているときだ。しかし、一度重しがなくなれば、そういう株は大暴騰だ。出典:マーケットの魔術師/デビッド・ライアン
デビッド・ライアンは、全米No1のトレーダーを決めるUSIC(USインベスティング・チャンピオンシップ「全米投資選手権」)で、3度の優勝を成し遂げた伝説のスーパー・トレーダーです。
ウィリアム・オニール
空売りはリスクが無限ということで、特に問題があるのでしょうか。いや、私は無限のリスクはとらないから。空売りが裏目に出たら、最初の6〜7パーセントで損切りしてしまう。あらかじめいくらの損で買い戻すか決めておかなくちゃいけない。昔からの知恵として、私のリストの最後には分散投資というものがありますが。分散投資なんていうものは無知をヘッジするようなものだ。二、三の銘柄を保有して、それらについては何でも知っているという方がよっぽど良いね。絞りに絞った方が、とてつもないパフォーマンスの銘柄を拾うチャンスが増える。そうすればそれらの銘柄をより注意深く見ることもできるし、リスク管理上も重要なことだ。負けが続いたらどうするのですか。もし負けが続いて、それが自分の間違いでない場合は、市場全体が悪くなるかもしれないという合図だ。五〜六連敗したら、普通は一歩引き下がって現金にし始めるときかどうかを考えたくなる。出典:マーケットの魔術師/ウィリアム・オニール
ウィリアム・オニールは成長株投資の名著「オニールの成長株発掘法」の著者としても有名な投資家です。
成長株投資の神的存在ともいえるウィリアム・オニールは、先に紹介したデビッド・ライアンの師匠でもあります。
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リチャード・デニス
トレードの中で運というものはどれくらいの割合を占めているのですか。長い目で見ればゼロだね。まったくないと思う。この業界で運が良かったので金儲けできたという人はいないと思うね。あなたが大きなポジションをとっているとき、どういうところで自分の誤ちに気がつきますか。どういうきっかけでポジションを手仕舞うのですか。トレードをした後一〜二週間たっても損が出ている場合、明らかに間違っている。相当な時間が経過しているにもかかわらず、損益分岐点の辺りにいる場合もたぶん間違っているだろう。初心者のトレーダーに与える助言として何が一番重要ですか。小さくトレードしなさい。なぜなら、初めのうちはそれ以上悪くなり得ないほど出来が悪いからだ。自分のミスから勉強しなさい。自分の資金の日々の増減に振り回されてはいけない。一回一回のトレードの結果が持つランダムな性格ではなく、自分が正しいことをやっているかどうかに焦点を当てなさい。出典:マーケットの魔術師/リチャード・デニス
リチャード・デニスは400ドルの元手を約2億ドルにした伝説のトレーダー。
高校時代からの友人であるウィリアム・エックハートと「成功する優秀なトレーダーは育成することができるか」という議論から始めた、トレーダー養成プログラム「タートルズ」の創設者としても有名です。
1980年代にアメリカで有名になった伝説のトレーダー集団「タートルズ」に興味があるという人もいると思います。 この記事では、タートルズ最高のトレーダー「カーティス・フェイス」の著書「タートル流 投資の魔術」という本を紹介します。 […]
マーケットの魔術師に登場する16人の著名トレーダー
エド・スィコータ、デビッド・ライアン、ウィリアム・オニール、リチャード・デニスのインタビューから、ほんの一部を粋しました。
アメリカでは突出した成果を残したトレーダーは「ウィザード(魔術師)」と呼ばれて尊敬されます。
マーケットの魔術師では、このような具体的な質問に対するトップ・トレーダーたちの貴重な意見の数々がまとめられています。
マーケットの魔術師に登場する16人の著名トレーダーを紹介します。
- マイケル・マーカス
- ブルース・コフナー
- リチャード・デニス
- ポール・チューダー・ジョーンズ
- ゲーリー・ビールフェルド
- エド・スィコータ
- ラリー・ハイト
- マイケル・スタインハルト
- ウィリアム・オニール
- デビッド・ライアン
- マーティ・シュワルツ
- ジム・ロジャーズ
- マーク・ワインスタイン
- ブライアン・ゲルバー
- トム・ボールドウィン
- トニー・サリバ
マーケットの魔術師の著者
この本「マーケットの魔術師(青本)」の著者は、ジャック・D・シュワッガー(Jack D. Schwager)です。
先物取引やヘッジ ファンドのファンドマネージャーであり、トレーダーとして更なるレベルアップのために、アメリカのトップ・トレーダーたちに具体的な質問をしてみたかったというのが、この本を執筆する動機だったようです。
マーケットの魔術師が人気の理由
マーケットの魔術師(青本)は、数多くの個人投資家が最も影響を受けた本として、必ずと言っていいほど名前が上がる本です。
マーケットの魔術師が、世界中で数多くのトレーダーや投資家から長年支持され続けている理由の一つは、著者「ジャック・D・シュワッガー」自身が優れたトレーダーだったということもあるでしょう。
聞き手(本の著者)が優秀なトレーダーということもあり、トレーダー目線で語られる対話のやり取りやインタビュー時の状況などはとても興味深く、当時のアメリカを代表する著名トレーダーたちの貴重な体験や成功の秘訣が上手に引き出されています。
普通の本のように著者の解釈だけで書かれた本とは違い、マーケットの魔術師はインタービュー内容をまとめた構成になっているので、トレーダーたちの言葉をそのまま知ることができるというのも、マーケットの魔術師が人気になった理由の一つだと思います。
今回はマーケットの魔術師シリーズができるきっかけとなった、記念すべきシリーズ第1作目の通称「青本」を紹介しました。
この本を読んで面白いと思ったら、他のマーケットの魔術師も読んでみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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