2021年12月期第3四半期決算で通期業績予想の下方修正を発表してから1週間後。
今度はMSワラントの発行を発表したニューラルポケット(4056)。
しばらくは株価低迷が続きそうですが、今後業績を回復させることはできるのでしょうか。
そこで今回はニューラルポケット(4056)の将来性について考察してみたいと思います。
ニューラルポケットの事業内容
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
まずはニューラルポケットの事業内容について簡単に説明します。
ニューラルポケットは「世界を便利に、人々を幸せに」というミッションを掲げ、AIエンジニアリング事業を展開しております。
主に「人流・防犯」、「駐車場・モビリティ」、「サイネージ広告」、「在宅コールセンター」、「ファッション解析」をはじめとして、AIを活用したスマートシティを形成するサービスを独自に開発・提供しています。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
ニューラルポケットのAIエンジニアリング技術は、大容量のデータ処理を行うクラウドAI型のアプローチではなく、必要に応じて少量のデータ処理を行うエッジAI技術に注力しています。
クラウドAI型に比べ、低コスト・低遅延・プライバシー保護にも寄与するエッジAI技術は世界的に注目されています。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
事業モデルのシフトチェンジ
2021年12月期第3四半期の決算説明会で、今後はフィーベースの事業モデルから、ユニットベースの事業モデルにシフトチェンジしていくという経営方針が示されました。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
下記の各説明資料では、SaaS事業とAI事業の比較などを例にあげ、ユニットベースの事業モデルの優位性を強調しています。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
ユニットベースの事業モデルがSaaS事業といえるのかは別として、より成長が見込める事業モデルにシフトチェンジするというのは妥当な判断です。
しかし上記のような説明資料だと、事業の根幹であるAI事業そのものを否定しているかのような印象を与えかねません。
SaaS事業とAI事業の比較資料は無くても良かったのではないでしょうかね。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
マンションサイネージ事業に本格参入
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
フォーカスチャネル社を子会社化して、商業施設や観光施設に加え、マンション領域へのサイネージ事業に本格参入していく方針も示されています。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
2021年12月期 通期業績予想の下方修正
ここからはネガティブサプライズについて。
ニューラルポケットは2021年12月期第3四半期決算において、通期業績予想の下方修正を発表しています。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
売上高△19.9%・営業利益△95.8%・経常利益△97%・当期純利益△96.9%という大幅な下方修正となっています。
ニューラルポケットのような成長企業にとって、これほど通期業績予想を下方修正するというのは結構なネガティブインパクトです。
M&Aによる事業成長が不透明
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
上場後間もない成長企業は、目先の利益より将来の企業成長のために、赤字を出してでも積極的に先行投資していくものです。
しかし将来の成長に向けたM&Aなどを理由に、来期の加速的な成長に向けてフィーベース案件を一部見送り、通期業績予想を大幅に下方修正するというのは理解し難いです。
当然ですが決算発表翌日は株価が暴落しています。
なにより事業の成長方針がM&A頼りというのが気になります。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
ニューラルポケットのAI技術を、M&Aによって事業の拡大に資するシナジーを創出するというのは賢明な判断だと思います。
しかしM&Aというのは相手ありきなので、上記資料のような事業成長が出来るかどうかはかなり不透明感があります。
同時にニューラルポケット単体のAI事業では先行きが厳しいという印象を受けます。
画像出典:ニューラルポケット/決算説明資料
MSワラントによる株主の信頼失墜
画像出典:ニューラルポケット/第三者割当による第11回新株予約権発行に関する補足説明資料
M&Aによる事業成長のためとはいえ、通期業績予想の下方修正を発表してから1週間後にMSワラントを発表するというのは、多くの人が驚いたのではないでしょうか。
MSワラントとは「Moving Strike Warrant」の略で、“行使価額修正条項付新株予約権”のことを言います。
MSワラントについての詳しい説明は省きますが、MSワラントを行うと既存株主には何一つ良いことがないので株価下落は避けられません。
MSワラントは上場企業が資金調達に使う方法として知られています。 既存株主にはすこぶる悪評が高く“悪魔の錬金術”ともいわれるMSワラント。 今回はMSワラントの仕組みや新株予約権との違い、MSワラントを発行する理由やMSワラント[…]
MSワラントの説明資料の内容、MSワラントを発表するタイミング、このIRの発表のしかたは、株主からの信頼をかなり失墜させたと言わざるを得ません。
どうせなら決算発表の時点でMSワラントも一緒に発表していた方が、少しはマシな印象だったのではないかと思います。
なんでこのタイミングで?という疑問が残りますし、IRの出し方ひとつをとってもネガティブな印象を持った投資家が多いと思います。
ニューラルポケット(4056)の将来性
AI技術は高い成長性が期待できる事業モデルということもあり、ニューラルポケットは上場後から将来性についてはかなり注目されていた企業だと思います。
しかし2021年12月期第3四半期決算の決算説明資料を見ても疑問点が多く、好印象を持てる内容ではありませんでした。
現状を見る限りニューラルポケットの将来性には不透明な部分が多く、業績の回復にはそれなりの時間が必要だと思います。
当面はM&Aによる事業シナジーが、どれだけ業績を回復させられるかに注目です。
あとIRの出し方はもう少し考えた方が良さそうですね。
さすがに直近の悪材料はもう出ないと思いますが、株価はしばらく低迷することになりそうです。
ちょっと厳しめの考察となってしまいましたが、今後のニューラルポケットに期待して、今は静観しているのが無難でしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。